こんにちは!丹後エクスペリエンスのやっさん(@yoisho8)です!
ここでは、株式会社あしあとが行うプラスチックアップサイクル事業『Precious Plastic』についてお話したいと思います!
・Precious Plasticとはどんな取り組みなのか?
・なぜ株式会社あしあとはPrecious Plasticをやってるのか?
Precious Plasticとは?
Precious Plasticは、オランダ発の個人で取り組めるプラスチックリサイクルのオープンソースプロジェクト。プラスチックゴミをリサイクルし、貴重な体験や商品、コミュニティを生み出す取り組みです。
私たちは、このプロジェクトを通じてプラスチック廃棄物の問題に取り組み、地域に新たなリサイクルの可能性を示しています。3分間の紹介動画もあるので、興味がある方はぜひご覧ください。
プラスチックゴミが深刻な環境問題となっている中、Precious Plasticでは廃プラスチックをリサイクルし、貴重な体験や商品、そしてコミュニティを生み出す取り組みが世界中で行われています。
通常、リサイクル工場を設立するには莫大な資金が必要ですが、Precious Plasticでは、自分たちで小規模なマシンを手作りし、低コストで始められることが特徴です。このプロジェクトでは、必要な知識や技術がインターネット上で無料公開され、誰でも学びながら実践できるのです。まさに革新的なアイデアといえます!
ここからは、なぜ私たちあしあとがPrecious Plasticに取り組んでいるのかについてご紹介します。
▼動画で簡単にご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください。
海ゴミ
現在、世界中で様々な環境問題が発生していますが、「ゴミ」の問題も深刻な問題のひとつです。
私が暮らす丹後は海がすぐ近くにあり、日々多くの海ゴミが漂着します。この海ゴミの現状を目の当たりにしたことが、ゴミ問題へのアクションを起こすきっかけとなりました。
地域でも定期的に海岸清掃が行われていますが、昔に比べてゴミの量は増加の一途をたどっています。さらに、高齢化と人口減少が進む中、清掃活動自体も負担が大きくなっているのが現状です。
2050年、海の中のゴミの量が、海の生きものの量を超える
また、今から30年後には、ゴミの量が現在の2〜3倍に増加すると予測されています。そうなれば、海の生き物の総重量より海ゴミの総重量が多くなる可能性があると言われており、非常に深刻な問題です。
上記の図には、以下のような予測が示されています:
- プラスチックの生産量が今後3倍に増加すること
- 海洋に漂うプラスチックゴミの量が、海洋生物の総重量と同等になること
- 世界で使用される石油のうち、プラスチックの原料として使われる割合が現在の6%から20%に増えること
これらのデータが、私たちが直面する環境問題の深刻さを物語っています。
将来こどもたちに、自然で過ごす素敵な思い出を
我々大人は残せるだろうか?
今、私には3人の子どもがいて、30年後にはちょうど今の私と同じ年齢になります。今は子どもたちと一緒に大好きな海で思い切り遊べて、とても幸せです。
しかし、子どもたちが私の年齢になる頃、もし彼らに子どもがいたら、果たして彼らも同じように海や自然の中で素敵な思い出を作れるでしょうか?
今後もゴミの量は増加し続け、少子高齢化が進む中で地域のゴミ回収能力は低下していくと考えられます。つまり、これは「もしかして」ではなく、今の消費や廃棄の現状を踏まえると、息子たちが大人になった頃には、彼らもその子どもたちと共に自然で遊ぶことが難しくなる可能性が高いということです。
こうした状況を前に、ゴミや消費の在り方に恐怖すら覚え、将来に向けて次のような使命を感じるようになりました:
- 自らがビーチクリーンのプロとなること
- 海ゴミの処理と資源化が一般的な職業のひとつになること
- ビーチクリーンを誰もが参加したくなる楽しいイベントにすること
その第一歩として、地域の有志で「MOYAKO」チームを結成し、ビーチクリーン作戦やイベントを始めました。
丹後ではビーチクリーンの参加者や、ゴミに対して一緒に考えてくれる人々は増えてきました。
ゴミ処理場の問題
ビーチクリーン活動の参加者が増え、それに伴い集められるゴミの量も増加しました。この勢いでさらにビーチクリーンの規模を拡大してゴミを集めていこうと意気込んでいたのですが、活動を進める中で、もう一つの課題に直面しました。それは、集めた海ゴミを最終処分場まで搬送する必要があるということです。
実際に最終処分場を訪れたとき、その光景に衝撃を受けました。
最終処分場は山中に位置し、そこには集められた海ゴミがまさに「山のように」埋め立てられていました。海で清掃活動を行って達成感を得た直後に、今度は山がゴミで埋め尽くされていく現実を目の当たりにしたのです。
京丹後市にも焼却場はありますが、海ゴミはその量や種類、そして砂や油、塩分といった汚れが焼却を難しくしており、特に塩分が施設にダメージを与えるため焼却は避けられています。こうした理由で埋立処分が選択され、日本全国でも同様の方法が採られている地域が多いのです。
京丹後市は地域での処分能力が限界に近づいており、現在では海ゴミを三重県に搬送しています。しかし、三重県の処分場も無限に使えるわけではなく、限界が訪れれば再び頭を悩ませることになるでしょう。
では、なぜ処分場が2023年に満杯になったのか?それは海ゴミだけでなく、地域住民が出す「不燃ごみ」の存在が影響しているのです。プラスチック、金属、陶器、家電製品などの不燃ごみが、少しずつ確実に処分場のスペースを埋め尽くしています。
ゴミ問題を解決するには、単にゴミを回収するだけでなく、ゴミの発生そのものを抑え、減らし、資源化することが不可欠です。そして、ゴミの未来について真剣に考え、具体的な行動に移す人を増やすことが重要です。しかし、どうすればそれが実現できるのでしょうか?
Precious Plasticを知る
処分場の問題に頭を悩ませていたとき、知り合いから「Precious Plastic」という取り組みを教えてもらいました。自分でリサイクルマシンを作り、地域のプラスチックゴミを集めてリサイクルし、さまざまな魅力的な製品を作り出すプロジェクトです。
↑これがPrecious Plasticのリサイクルマシン
リサイクル工場を建てるには多額の資金が必要で、「よし!やろう!」と簡単には踏み出せません。そこで生まれたのが「自分でつくってしまおう!」というPrecious Plasticのアイデアです。まさに画期的な発想でした。
私も実際にマシンを作ってみましたが、材料費だけであれば5〜10万円ほどで制作が可能です(工場のマシンを購入すると数百万円から数千万円かかるため、Precious Plasticならアルバイト1〜2ヶ月分の努力で始められます)。
「自分でマシンを作って、あの海ゴミをリサイクルすれば、埋め立てられるゴミを減らせるかも!」とワクワクしました(もちろん、これだけでは全てのゴミ問題が解決するわけではありませんが、そのときの私は「これで海ゴミ問題も解決!」というほどの勢いでした)。
※現在、株式会社あしあとのPrecious Plasticでは、海ゴミではなく地域で集めたペットボトルキャップ(PP:ポリプロピレン)を主な素材として製品を作っています。
Open Source(オープンソース)
Precious Plasticの最大の特徴ともいえるのが、この「オープンソース」という仕組みです。もともとはプログラミングの分野で使われていた言葉ですが、Precious Plasticを通じて私もこの概念を知りました。オープンソースとは、文字通り「オープン(公開された)」「ソース(素材や情報)」という意味です。
Precious Plasticでは、プラスチックのリサイクルに関する知識、マシンの設計図、制作方法、製品の作り方など、あらゆる情報が無料で公開されており、誰でも自由に利用できる仕組みになっています。
また利用者は、情報を自由に使い、編集し、より良い方法を考え、また世界中に共有していくことができます。
Precious Plastic TANGOでつくったオープンソースデータもアップしていきます。
ひとりでは発想に時間がかかったり、限界があったりする問題を世界中のみんなで解決していこうという考えです。
Open Sourceとはいえ難しそう!?
Precious Plasticのマシンの作り方やリサイクル情報は、すべて公式のウェブサイトやYouTubeで公開されています!とはいえ、「それでも作るのは難しいのでは?」と感じる方も多いはずです。実際に、私も「どうやって作ったんですか?」とよく質問をいただきます。
私も最初はPrecious Plasticをやってみたいと思ったものの、正直ひとりでは難しいと感じていました。そんなとき、日本で初めてPrecious Plasticのマシンを作った方が鹿児島県の「ダイナミックラボ」にいると知り、早速お会いすることにしました。
この話についてはまた別の記事で詳しくお話ししますが、ダイナミックラボのテンダーさんからPrecious Plasticのマシン作りや、必要な鉄鋼や機械金属に関する知識・技術を教わることができました。
▼詳しくはこちら
Precious Plasticを制作し、丹後に持ち帰り、現在Precious Plasticで実際に製品を作ったり
それを売ったり、工房見学・体験ツアーを作って収益を生み出し
ビーチクリーンの資金にしたりしています。
▼見学・体験にツアーについてはコチラをご覧ください。
丹後エクスペリエンスのPrecious Plastic 工房
あしあとの事務所横の倉庫はもともとレンタサイクル用の自転車置場にしていたのですが、空きスペースを使ってPrecious Plasticを行う場所にしていきました。
現在、こどもや、学生さんから、企業の方がフィールドワークや研修、視察に訪れたりして、海ゴミの問題や、プラスチックのことを知って、学べる場所になっています。
プラスチックどうやってリサイクルするの?
Precious Plasticをどうやってつくるのか?プラスチックのリサイクル方法を簡単に説明した動画や記事がありますので御覧ください。
Precious Plastic TANGO製品の活用
あしあとでつくられたPrecious Plastic製品はさまざまな場所で販売や活用していただいています。
東京都『OTEMACHI KORTO』
株式会社フロンティアコンサルティングさま本社ワークプレイス
愛知県株式会社電通名鉄コミュニケーションズさま ワーキングプレイス
KISSUIEN stay and foodさま 客室
Precious Plasticをはじめてわかったこと
Precious Plasticを始めてみて、いくつかの気づきがありました。最初は「山に埋め立てられるゴミを何とかしたい」という思いで始めたのですが、実際にリサイクルできるプラスチックの量は、1時間にわずか300gほどです。
海ゴミや埋め立てられる多くのゴミをPrecious Plasticでリサイクルするには、使えるプラスチックを選別し、汚れを取り除くなど、膨大な労力と時間がかかります。
Precious Plasticをどう活用するかは人それぞれですが、私は、時間と労力をかけて製品を作り続けるよりも、眼の前の海のゴミをもっと回収しなければ!という想いに再び気づくことができました。
ビーチクリーン活動を持続、拡大し、ビーチのゴミを1つでも多く回収するとともに、多くの人にこの問題を知ってもらうことが大切だと感じました。それがきっかけで、多くの人が意識や行動を変えてくれることこそが、持続可能な未来への道だと考えるようになりました。
Precious Plasticはてとも楽しくて魅力的なプロジェクトなのですが、
私は人に海ゴミや環境問題、モノの生産、消費、廃棄について考えてもらう手段として活用していこうというように考え直すことにしました。
海ゴミ問題を伝える
これまでの経験から、今後も増え続ける海ゴミの問題に対して私がやるべきことは、ビーチクリーンを「職業」にすること。現在、海ゴミの回収や処分場への搬送は多くがボランティアによって行われていますが、今後も増え続ける海ゴミに対応するためには、回収や搬送を一つの「職業」として確立すべきだと強く感じています。
そしてもうひとつが、海ゴミを資源化し、埋立処分をゼロにすること。海ゴミの現在の埋立という処分方法は決して持続可能な方法だとは思いません。海ゴミのうち大部分を占めるプラスチックは、素材としてリサイクルしたり、燃料として活用する技術も存在します。Precious Plasticでも海ゴミのリサイクルは可能です。しかし、素材としての活用も魅力的ですが、日々発生している海ゴミの量に立ち向かうには、私は燃料として油やペレットにする方法が有力だと考えています。海ゴミの種類や状況に応じて、適切な処理方法を選択できるようになるには、まだまだ知見や地域、企業、行政との連携が必要になってくると考えています。
そのため、これまで丹後エクスペリエンスとして活動してきた事業を2024年の10月に株式会社あしあととして法人化しました。今後は、先に述べた地域、企業、行政との連携を図りながら、この地球規模の環境問題にアクションしていこうと考えています!